■20220313/フラれまくった末実現した最強最高のライブ! 「ミルフラ!企画Vol.9」

2024年2月15日ライブレポート

今回は河津桜が濃い色で街を彩る早春、3月13日開催の「ミルフラ!企画Vol.9」のレポートです。

3月6日に解除される予定だった蔓延防止法が直前で延長となりましたが、そこはもう織り込み済み。すっかり慣れたもので、開場、開演時間をあらかじめ早めていたので、特に慌てたり変更する必要もありませんでした。

しかし開催に至るまでは、もちろん紆余曲折ありまくりです。その最たるものはやはりブッキング。もともとこの企画は、フラメンコから離れていた若手バイラオーラ・和泉冴英香さんが約2年ぶりに復帰するという話からスタートしました。冴英香さんは森田志保さんのもとでフラメンコを学んだ実力派で、僕も以前はちょこちょこ観に行ったりしていました。メンバーは彼女と仲良しで当企画ではおなじみの脇川愛さん、カンテは僕の企画に3度目の出演となる永井正由美さん、ギターは今年1月に「徳永兄弟」としてメジャーレーベルと契約を結んだ兄弟の兄、徳永健太郎さん。

……と、ここまで決まったところで異様に高い“壁”が出現。若手が2人なので、あと1人はベテランの方にご出演いただきたかったのですが、ラブコールを送る端からご都合合わず。5人くらいにフラれたでしょうか(汗)。

この人、いやあの人……いろんな方のお名前と踊る姿が走馬灯のように頭を駆け巡ります。不思議なことにそんな中で1人、お名前を思い浮かべた時に光を感じる方がいました。しかしその方は2人めのお子様を出産して間もなく、開催予定の3月の時点でお子様は7カ月。果たしてご出演いただけるのか…? 逡巡しつつ連絡してみたところ、

「もちろん踊らせてください!」

そう石川慶子さんからお返事をいただいた時は、思わず天を仰ぎましたよ、えぇ。天、といっても見上げて飛び込んでくるのはS.Horiの部屋の煤けた天井なわけですが、その向こうに満天の星空が見えたような気分でした。

 名古屋にお住まいの慶子さんは、2020年に「トリノ国際フラメンコ舞踊コンクール」プロ・ソリスタ部門で優勝。フラメンコ専門誌の「パセオフラメンコ」でも、2020年9月号の表紙を飾ったり、コラムの連載もしておられました。お話ししてみると、子育てやコロナもあって、東京で踊るのは2年ぶりなのだとか。

ありがたいことに慶子さんもこのライブを楽しみにしてくださって、今思えばブッキングでフラれまくったのも、「慶子ちゃんがよいぞ、うむ」という神様のご意向だったのかもしれません。ベストメンバーで開催と相成った「Vol.9」、予想を上回る素晴らしいライブとなりました!

和泉 冴英香/ソレア・ポル・ブレリア、タラント

冴英香さんは、1部はソレア・ポル・ブレリア、2部はタラント。ブランクがあったとはいえコンパス感はしっかりしていて、密度の濃い健太郎さんのギター、正由美さんの全身で歌う圧のある歌が相まって重みが増していき、背筋を伸ばして観てしまう魅力がありました。


1部/ソレア・ポル・ブレリア

特にタラントは、健太郎さんがイカしたフレーズで作り出した世界に溶け込むように冴英香さんが踊り、さらに正由美さんの歌が重なって、とても厚みのある舞台となっていました。


2部/タラント

脇川 愛/グアヒーラ、ソレア・ポル・ブレリア

1部のグアヒーラは、しっとりした部分と躍動感あふれる部分のバランスが良く、観ていて気持ちのよい一曲でした。健太郎さんが細かく弾くところでは愛さんも指で音に合わせたりして、しっかり融合しているように見えました。


1部/グアヒーラ

2部のソレア・ポル・ブレリアは、鋭さ、力強さでグイグイ押しつつ形の綺麗さで魅せる魅力的な踊りに仕上がっていました。観るたびに進化しているので、また拝見するのが楽しみです!


2部/ソレア・ポル・ブレリア

石川 慶子/シギリージャ、アレグリアス

1部のシギリージャ、これが超ヤバかったです。シギリージャという歌に込められた悲しみ、苦悩、嘆き…そういったものすべてを、緩急や表情、気迫や細かな動作、身体の傾け方まで活かして表現しているように見えました。曲が進むにつれてギターの音や歌、パルマの圧も高まっていき、熱が上がり、昇華すると同時に、S.Horiの涙腺も崩壊するという。暗い舞台で輝きを感じるほど高密度で素晴らしい一曲でした。


1部/シギリージャ

2部のアレグリアスは僕のリクエストで、バタマントンで踊っていただきました。出だしの健太郎さんの素晴らしいフレーズに心奪われ、そして慶子さんが操る美しい生き物のようなマントン、優しい風のように舞い上がるバタ・デ・コーラ。青空の下で強い日差しを浴びているような、温かくて幸せな気分になれるアレグリアスでした!


1部/アレグリアス

ラストはこの日お誕生日だった正由美さんのお祝いもあったりして、ライブは盛況のうちに終了しました。

振り返ってみると、それぞれの個性がはっきりと出ていて、それを正由美さんや健太郎さんが増幅し、見応え、聴き応えともにハイレベルなライブになったように思います。この原稿は配信を見返しながら書いているのですが、書くのを忘れてつい見入ってしまうほどです。唯一残念なのは…相変わらずS.HoriのMCがへっぽこだということです(汗)。精進します(涙)。

今回もご出演いただいた皆様、お店のスタッフの皆様、そしてお客様、本当にありがとうございました!