■20201125/配信時代の未来を見据えたチャレンジライブ「盛植俊介企画」!

2022年6月6日ライブレポート

2020年4月、新型コロナウイルスの拡大により、日本全国に緊急事態宣言が出されました。これをきっかけに、ネットを通じてご自宅でもフラメンコのライブが視聴できるライブ配信が始まったことは、多くの方がご記憶と思います。

緊急事態宣言の解除、自粛ムードからの開放といった時期を経て、この原稿を書いている12月には、各タブラオで通常に近い状態でライブが開催されるまでにフラメンコ界は回復しました。ライブ配信も、遠方にお住まいの方、仕事などで都合の合わない方でも視聴できるため、フラメンコの新たな楽しみ方として今やなくてはならない存在となっています。

そして始まってから半年以上が経過し、ライブ配信は新たなフェーズを迎えようとしています。当初は感染の懸念からタブラオに足を運びにくかったり、また物珍しさで配信を視聴する方も多くいました。しかし配信が当たり前となった今、画質や音質の向上、配信を意識した演出なども求められるようになってきています。

そんな中にあって、チャレンジングなライブが11月25日に開催されました。場所は浅草橋・ラ バリーカ。ギターの盛植俊介さんが企画を担当したライブです。

1部でフラメンコの曲を取り込んだ創作寸劇を上演し、2部で踊り手さんたちのソロを上演するという内容。キモとなるのは寸劇で、盛植さんにお話を伺ったところ、やはりライブ配信を意識し、ストーリー性をもたせることによってフラメンコをあまり見たことのない人にも楽しんでもらえたら、との想いがあるそうです。

出演する踊り手の1人は「日本に恋した、フラメンコ」の企画、運営者であり積極的にライブ配信を行なっている永田健さん。もう1人は、コロナ禍からのフラメンコの復興を目指すサイト「フラメンコ2030」が開催した「第1回Webフェスティバル」で入賞を果たした林由美子さん。

ネットでの発信に積極的な2人に、熱きカンテ ダニエル・リコを加えたチャレンジライブ、どんなライブになったのでしょうか?

1部 創作『ノスタルジア』

Scene1 オープニング/まずは健さんが、シブい男の空気を漂わせながら姿を現します。

Scene2 登場/次に由美子さんが登場。ブレリアを踊りながら、華やかに舞台へ。

Scene3 出会い/曲はアレグリアス。出会った2人は恋に落ち、人生の中でひときわ輝く楽しいひと時を過ごします。

Scene4 男の登場/そこへもう1人の男、リコが登場。シブい健さんとは対象的に、軽快なルンバを口ずさみながら舞台へ。

Scene5 もう一つの出会い/健さんと恋仲だったはずの由美子さんは、今度はリコの元へ。新たな出会いの喜びをグアヒーラで演出。

Scene6 決闘/強い足音を立てて、いきなり健さんが立ち上がりました。恋人を奪われ怒り心頭、驚いた由美子さんは去り、健さんとリコとの決闘シーンに。

Scene7 ノスタルジア/決闘の果てに、健さんは恋人をリコに委ねることに。身を切るような孤独の中で、ファルーカを舞います。

2部『クアドロフラメンコ』

林由美子/タラント
創作寸劇が終わってホッとしたせいか、いつもにも増して激しい踊りとなっていたように思います。風を切り、拳を握りしめ、感情のすべてを叩きつける。そんな強い動作と気迫の表情は、観客を飲み込むような迫力がありました。

永田健/ソレア・ポル・ブレリア
整ったポーズや綺麗な回転など、激しくも洗練された踊りを披露。前半はジャケットを着て髪型も整っていましたが、後半はジャケットを脱ぎ髪を振り乱し、ワイルドな姿へ。その変化も魅力的でした。

最後はセビジャーナスで締めて、盛植さんのチャレンジライブは無事に幕を閉じました。

今回、出演者の方々が最も力を入れた創作寸劇は、セリフがないのでストーリーが少し見えにくい部分もありましたが、それ故にフラメンコの空気を壊すこともなく、僕自身は「粋な演出を組み込んだフラメンコメドレー」といった趣で楽しんで拝見しました。舞台の空気の盛り上がりや緊迫感を含め、ソロのみのライブとはまた違う見どころ、感じどころがたくさんありました。

この日はフラメンコをあまり見たことのない団体さんがお客様としていらしていて、「素晴らしいですー!!」「とても素敵ー!!」と、1部と2部の終わりに声援を上げていました。

笑顔で喝采を送る団体さんを見て、気づいたことがあります。

僕がフラメンコを見始めた頃は、踊りをただ漠然と観るだけで、何を伝えたいのか、どこを見てどう感じたらいいのか、全然わからず戸惑っていたものです。

そういうお客さんや視聴者にアピールするには、今回の創作寸劇のように、男女の関係や絡みなど見てすぐにわかる演出を取り入れると効果的なのでしょう。盛植さんの企画は的を得ていると思います!

盛植さんの創作寸劇がどんどん発展していって、多くの人に愛される定番企画となるよう祈っています。そしてフラメンコの裾野がもっと広がっていきますように! 意欲あふれるライブをありがとうございました!!